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「あのチーム、最近インシデント少なくない?」と言われたEMの1年
2026/2/28
「あのチーム、最近インシデント少なくない?」と言われました。まだまだある方だなーと思っていたのですが、調べてみると確かに新規機能開発分のインシデントは格段に少なくなっているかもと思い、EMとして1年間でなにをしていたんだっけ?と振り返る機会がありました。
品質を上げるために地味にやり続けてきたことが、ようやく形になってきた気がしました。EMになりたてのころは毎日毎日こなすことが精一杯だったのですが、それでも少しずつ以前よりは良くしようと思って小さな改善を繰り返していました。
EMになりたての自分は、10案件を並列で全部見ていた
EMになった当初、自分のやり方はシンプルでした。案件の詳細まで全部把握して、自分が判断して、自分で動く。コードのどの部分を変更すればいけるのか、見積もりはどのくらいか、ってところまで見ていたと思います。だいたい10案件くらいを並列で抱えながら、毎日疲弊していました。自分がボトルネックになっていたなと思います。
「このままでは人を増やしてもスケールせず、頭打ちになる」と気づいて、やり方を変えなければいけませんでした。人が増えるほど、自分一人で見られる範囲は相対的に狭くなっていきますし、アウトカムは最大化されません。
この1年でやろうとしたのは、自分がいなくても回るチームを作ることをやろうと考えていました。
正社員5名採用、業務委託3名増員しながら、チームの構造を変えた
まず取り組んだのがチームの循環と採用、それに伴う組織設計でした。
採用5名、オファー承諾率9割
この1年でチームは約1.5倍ほどになりました。1年間で採用できたのは5名。そしてオファー承諾率は約9割でした。
この数字の裏側にあるのは、採用プロセスの設計です。カジュアル面談の型化、オファーレターの導入、オファー面談での丁寧なすり合わせ。「内定を出したら終わり」ではなく、「入ってもらい、立ち上がるところまでが採用」という設計にしました。
入社してくれたメンバーの一人から「オファーレターが入社の決め手になった」と言われたことがあります。採用は、プロダクト開発と同じで、体験設計だと思っています。
採用を増やして人が増えるほど、チームの文化や規律を守ることの重要性も増していきました。心理的安全性は「何をしてもいい場」ではなく、「率直に言い合える場」と、その仕組みと文化作りなのだと、この1年で改めて実感しました。
ストリームアラインドチームへの移行
人が増えただけでは組織は強くなりません。誰が何に責任を持つか、構造を変える必要がありました。
従来のプロジェクト型チームでは、案件が終わるたびにチームが解散します。ドメイン知識が蓄積されず、毎回ゼロから立ち上げる非効率が続いていました。
そこでストリームアラインドチームへの移行を主導しました。価値の流れに沿ってチームを固定し、専門性と文脈をチームに蓄積していく構造です。運用を司るクラン・チームに必要な技術を探求するギルドの仕組みも合わせて作り、職能を超えた知識共有の場も設けました。
移行当初はチーム間のサイロ化を懸念する声もありました。そこに即座に「統合レトロスペクティブ」を導入したり、ミーティングのコミュニケーションデザインをしてチーム横断で課題を扱う場を作りました。
チームが自走し始めた
構造が変わると、チームの動き方が変わりました。
以前は自分が案件の詳細まで把握して判断していました。今は、チームが自分たちで設計し、自分たちで意思決定しています。自分がファシリテーターとして入ることはあっても、答えを出すのはチームです。
ほとんどの案件からEM(自分)が手離れした今、自分の時間はより未来志向の課題に使えるようになりました。これが、この1年で起きた最も大きな変化だと思っています。
評価にも、品質にも、仕組みを作った
チームの自走を支えるために、いくつかの仕組みも整えました。だいたい20名ほどのチームになったので、構造自体を変化しないと運用に耐えきれませんでした。
評価をAIで壁打ちできる仕組み
自己評価のプロセスに、AIを組み込みました。専用のプロンプトとフローを用意して、メンバーがAIと対話しながら自分の貢献を言語化できる仕組みです。
これが思った以上に効きました。提出される自己評価の具体性が上がり、「このメンバーが何をやっていたか」の解像度が明確に高くなりました。評価する側としても、事実ベースで話しやすくなりました。
品質文化の醸成・価値に向き合うプロセス整備
インシデントへの向き合い方も変えました。起きてから動くのではなく、起きにくい状態を作ることに投資しました。振り返りのプロセスを型化し、テストケースをテンプレート化し、開発プロセスの型化を行い、チームで「なぜ」を考える習慣を根付かせていきました。
「インシデント少なくない?」が嬉しかった理由
この一言が嬉しかったのは、自分の成果を認められたからだけじゃありません。
インシデントが減ったことは、誰かが頑張ったからではなく、チームの構造と文化が変わったからです。仕組みが機能している証拠です。自分が手を離しても、チームが自分たちで質を守り続けている。
チームメンバーが一生懸命やっている姿が外から見えるようになったということが、嬉しかったんです。
EMの仕事は、自分が活躍することではなく、自分がいなくても回るチームを作ることだと思います。1年かけて、ようやくそれが形になってきた気がしています。